3-4 照明器具 【和風照明のデザイン】

照明器具

 

かつて和風照明というカテゴリーは和室に合うデザインの照明器具の事を言っていましたが、和室がある住宅は大変少なくなっていますので、和風旅館や料亭、和食店舗など限られた需要になってしまったと言わざるを得ません。

しかし和風の照明に使われている素材は大変趣のある材料であると同時に、そのフォルム(これをデザインというかも)は洋室にこそ相応しいものが沢山あるのです。又海外の方から見ると日本の伝統美を含んだ素材の活用と眩しさのない柔らかい透過光が眼に優しい光となって彼らの網膜に映し出される点を日本人以上に高く評価しているのです。

そこで今回はこの和風照明を、「素材」「デザイン」「作家」という切り口で整理し、日本の財産として洋室にも海外の住宅にも十分使えるものだと認識して頂きたいと考えたのです。

1.素材

和風照明に使われている素材で特徴的なものは木材と和紙になるでしょう。木材は様々な樹種が使われますが熱によって変形するものや日本の湿度の高い環境を考えると選定範囲は数少なくなります。又竹を使用する器具などはつやのある側を表側にするか裏側にするかによってデザインの趣が全く異なることから、作家がそのデザイン効果を考慮して選定したりします。

和紙は一般的に光の透過率50%、反射率50%という特徴を持っています。つまり半分だけ光が透過すると言えるのですが、これが眼に大変気持ちの良い明るさとなる訳です。又和紙は濡れた布でふくことが出来ませんので、樹脂を含浸させた和紙(ワーロンと呼ぶ)を使うと雰囲気はそのままに長持ちする素材となります。

2.デザイン

量産する照明器具として素材を生かそうとすると大変シンプルな形にならざるを得ません。別な言い方をすると幾何学的なデザインが多くなると言うことです。つまり木の枠で幾何学的な形態を作りそこに和紙(又はワーロン)を貼り込むことになります。その和紙に色や柄を付けたり、木枠の表と裏に和紙を貼り部分的に透過光を半分にするなど使用者や作家の創意工夫で個性を与えることが出来るのです。形態はシンプルなので建築物に溶け込むのですがポイントとなる個性が空間の中で引き立て役になる訳です。

 

部分的に和紙を二重に貼ると個性的なデザインになる

 

 

3.作家が存在する

これらのデザインを作品として世に送り出している作家の事を日本人はもっと知るべきだと私は常々考えています。日本人が作り出した芸術的な作品を世界の人に知ってもらう機会があまりにも少ないからです。

  • ちょうちんという愛称で知られる「AKARI」をデザインした「イサム・ノグチ」
  • 木枠に竹を使いそれを曲げることにより美しい局面を表現した「近藤昭作」
  • 木枠フレームの存在感を限りなく無くし、和紙の芸術のように感じさせた「村野藤吾」
  • 自身の建築物との一体感をシンプルな形態で成し遂げ、現在でも和風照明デザインの原点となっている「吉田五十八」
  • 和紙のテクスチュアに「しぼり」のような趣を出してしわによる光の斑をテーマにした「伊部京子」の「阿波」シリーズ
  • 日本の伝統的遊びを照明の楽しさとして完成させた「TAKO」をデザインした「喜多俊之」など、量産品として生まれたものばかりです。

イサム・ノグチの「AKARI」

村野藤吾シーリングライト

吉田五十八ブラケット

 

竹の裏側を表に使った竹シリーズ

 

 

これらの古い伝統的なものと新しい建築物や家具とをいかにマッチングさせるかがインテリアデザインのセンスであろうと思います。

例えばフランスのルーブル美術館(古いお城の再利用)と中庭にあるガラスのピラミッド(近代的なモニュメント)はフランス人のデザインセンスを象徴したもので、彼らはそれを自慢しているのです。

(次回もお楽しみに)

(文/河原武儀氏)



和風照明器具のミヤコアンドン 都行燈株式会社
Japanese lamp atelier
公式サイト https://www.miyako-andon.com/