2-1 光源について
【白熱灯は悪者ではない】
今の照明業界は照明器具を買う時、ほぼLEDのみしか選べない世の中です。
これは世界が掲げる地球温暖化対策やエネルギーの無駄を省くという面で致し方のないところが大きいのですが、日本は特に少し大げさに取り上げている部分も見受けられます。
照明の光源は大きく分けて白熱・放電・固体発光(電界)という発光原理に分けられます。これらはそれぞれ長所と短所が存在し、短所を抑えて長所を生かすならば、それぞれを上手く使い分けできると私は信じています。
白熱灯は素材感が強く出て気持ち良い
特に白熱灯は電気代がかかる、発熱量が大きいことから、前述のエネルギーの無駄というやり玉に上げられ世界的に悪者扱いにされています。しかし住宅などでは長所もあるのです。それはフィラメントから放射状に光が出るため、物体に光が当たると点光源と言われる影の効果が出るのです。つまり光が一方向から当たると反対側に影が出ます。この影がフォルムを美しく見せたり、テクスチュア(素材感)が豊かに感じるのです。例えばカーテンを白熱灯で照らすとその色彩だけでなく光沢感・生地の織り目、ヒダのグラデーションが他の光源以上に美しく見えるのです。金糸が入った織物などは絶妙な見え方をしましたので、能や歌舞伎を代表に舞台照明でつい最近まで白熱灯が使われてきました。又フィラメントから放射状に出る光は全方向に出るので、提灯などのような丸い形の物でも均一にセードが光るという、他の光源では不得手なことが出来るのです。
白熱灯のスタンドが人間に寄り添う
さらに欠点とされている熱は赤外線や遠赤外線なので、人間の毛細血管に作用して血流が良くなる効果も得られ、就寝前の読書で白熱灯のスタンドが手足の冷えを改善することもある訳です。
白熱灯は夏は暑いし、家じゅうで使用するという時代ではもうありませんが、スタンドや行燈として人間に寄り添った器具が1台だけでもあることは、その長所を生かした良い選択だと私は思います。
江戸時代に存在した有明行燈に豊かさのヒントが・・・
白熱灯は歴史的な観点からすると古い光源です。日本人の生活に根付いたのは昭和の初期で、それまでは燃焼光源としてガスや油、ろうそく等が使われていました。しかし、そんな暗くて不便な生活の中でも様々な工夫と使われ方があり、これからの豊かな私たちの生活の中で生きるヒントがありました。「故きを温ねて新しきを知る」というところですかね。
そのヒントを別の機会にご紹介したいと思います。
(次回もお楽しみに)
(文/河原武儀氏)
和風照明器具のミヤコアンドン 都行燈株式会社
Japanese lamp atelier
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