1-5 灯りの効果
【照度で明るさを決めると失敗する】
「照度」とは床や家具に当たった光で、その場所の明るさを言います。良く誤解されているのは「目で見た明るさ」と思われていることが多いのですが、床やテーブルに当たって反射した光ではなく、光源から物に当たった光なので眼で見た明るさではありません(色によって反射率が異なるので)。つまり白いカーテンや白いテーブルは明るく見えますし逆に黒い内装は暗く見えるので照度は分からないことが多く、照明プランする時は気を付けなければなりません。私達が照明プランする時は文字を書いたり読んだりする部屋や場所だけ照度の確認をしますが、その他の住宅照明は照度ではなく内装材の反射がどのくらいあるか、ということを確認した方が失敗がありません。
照度は物に当たった光で反射率は関係ない
1-2で明るさと明るさ感を使い分けよう、というテーマで文章を書きましたが、明るさというのが照度で、明るさ感と言うのが反射率を考えることです。明るさ感は数字で表すことをあまりしません(物理的な計算は輝度計算で出来る)。感性が求められる内容になります。つまり少しオーバーに言うと、照明計画はインテリア計画がベースになり、インテリアデザインの感性が重要だと言えるのです。
照度は距離が関係する
さて少し話を変えますが照度は距離によって大きく変化します。光源から物までの距離が近いと明るくなりますが離れるとグッと暗くなります。どの位異なるかというと「距離の二乗に反比例する」と言われています。例えば食卓の上から1mの高さにペンダントを吊ったとします。これを2mの高さに変更するとテーブルの上の明るさはどのようになるかというと、1m÷(2m)² なので=4分の1になります。距離が倍離れると明るさは4分の1になってしまう訳です。当然50cmに近づけると4倍の明るさになる訳です。ですから照明器具は物に出来るだけ近づけた方が明るく省エネになる、ということが言えるわけです。
白熱電球の時代は近づけるとその熱で危険な場合がありましたが、LED時代はどんなに近づけても熱は感じませんのでお得な部分が多いと言えます。プランする時には天井から床を照らすことが最も距離がありますのでダウンライトやシーリングライトなどは比較的損なやり方だとご理解頂けるのではないでしょうか。
さてJISではこの照度を照度基準として様々な空間の照度の目安を決めています(現在では照明基準という名前に変わっている)。例えば住宅では居間で30lx~75lx、寝室で10lx~30lxなどある幅を持って基準数値が出ています。これは法律としてこの範囲に収めてくださいと言う数値ではなく目安として利用するための基準です。
JIS照度基準
ここで重要なことが2点読めるのではないかと思います。1つは部屋によってこの照度基準が異なっていると言うことです。しかし現実には8畳の寝室も8畳の子供部屋も同じ8畳タイプのシーリングライトが選ばれ同じ明るさになってしまっているのです。2つ目は全般の照度に対して読書や食卓など部分照明が必要ですと語られている、ということです。全般照明のシーリングライトが選ばれたら部分的なことは無視されているのが実情ではないでしょうか。
以上今回の記事をまとめると、照度は
- 感覚的なものをプラスする
- 照明器具を近づける
- 部屋によって明るさに差をつける
- 全体+部分照明でプランする
を実践してみてください。
(次回もお楽しみに)
(文/河原武儀氏)
和風照明器具のミヤコアンドン 都行燈株式会社
Japanese lamp atelier
公式サイト https://www.miyako-andon.com/